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透明AlON(オキシ窒化アルミニウム)の放電プラズマ焼結 — 立方晶スピネル型の透明装甲窓

オキシ窒化アルミニウム(AlON)は、酸化アルミニウムに窒素を取り込んで立方晶スピネル型に安定化させた単相セラミックスで、可視から中赤外まで通す透明装甲窓の有力材料とされる。Al₂O₃とAlNからの反応と緻密化を同時に進める必要があり、放電プラズマ焼結(SPS)はその一体化に向く。LiやXibaoらの公開研究をもとに、相形成・緻密化・炭素汚染の論点を整理する。

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酸化物に窒素を入れて、透かす

防弾性と透視性を一枚の窓で両立しようとするとき、有力候補に挙がる材料の一つがオキシ窒化アルミニウム(AlON)である。名前のとおり、酸化アルミニウム(Al₂O₃)に窒素を取り込んだ化合物だ。

普通の酸化アルミニウム(コランダム、α-Al₂O₃)は六方晶で、方向によって屈折率が異なる複屈折を持つ。多結晶にすると粒界ごとに屈折率が食い違い、そこで光が散乱して白く濁る。ところが、Al₂O₃に窒素を一定量固溶させると、結晶構造が立方晶のスピネル型に組み替わって安定化する。これがAlONであり、組成はおよそAl₂₃O₂₇N₅付近の単相固溶体になる。立方晶になった瞬間、複屈折散乱という壁が消える。

立方晶で等方、可視から中赤外まで広く透過し、硬く、衝撃に強い。この組み合わせが、AlONを透明装甲窓やセンサ窓の材料として位置づける理由である。その緻密化手段として、放電プラズマ焼結(SPS)が研究されてきた。

反応と緻密化を、ひとつの工程で

AlONの焼結が他の透明セラミックスと決定的に違うのは、出発点である。

YAGやスピネル(MgAl₂O₄)の透明体は、すでにその組成の粉末を用意し、それを緻密化して作る。これに対しAlONは、原料としてAl₂O₃とAlNを混ぜ、加熱中の固溶反応でAlON相そのものを生成させながら、同時に気孔を消して緻密化する。相形成と緻密化を一工程に束ねる「反応焼結(リアクティブ焼結)」が、AlON透明体の核心になる。

この二重の課題が、プロセスに厳しさを課す。反応を完結させて単相のAlONにしないと、未反応のAl₂O₃やAlNが残り、それ自体が屈折率の異なる第二相として散乱源になる。一方で、反応を進めるために高温・長時間にさらせば粒が粗大化し、別の問題を呼ぶ。反応の完結、緻密化、粒成長の抑制を、同時に成立させねばならない。

SPSが効く理由

SPSは、黒鉛ダイスに充填した粉末へパルス直流を流し、ジュール加熱で急速昇温しながら一軸加圧する手法である。毎分100°Cを超える昇温で目標温度に素早く達し、保持を数分に抑えられる [1]。数十MPaの一軸応力が物質移動を助け、低い温度でも気孔を潰す方向に働く。

この急速性と加圧が、AlONの反応焼結にうまく噛み合う。Shanらは、SPSで透明AlONを作製し、昇温速度が相形成・微細組織・透過率に与える影響を体系的に調べた。昇温プロファイルが、反応の進み方と最終的な光学品質を左右する重要なつまみであることを示している [2]。急速に目標温度へ持ち上げ、短時間で反応と緻密化を完了させる進め方が、粒成長を抑えつつ単相化を達成するうえで効いてくる。

焼結助剤という調整つまみ

AlONの透明化では、ごく少量の焼結助剤が大きく効く。

Xibaoら(Liら)は、Y₂O₃の添加量を変えてSPSによるAlONの緻密化挙動を調べた。適量のY₂O₃が反応と物質移動を助け、緻密化と透光性を改善する一方、過剰になるとイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)相を第二相として生じ、これが粒界に偏析して特性を変えることを報告している [3]。助剤は「少なすぎても多すぎても困る」典型で、最適量の見極めが透過率を決める。

助剤のもう一つの役割は、後述する炭素汚染への対処にもつながる。

炭素汚染という共通の難問への、AlON流の対処

SPSに共通する弱点が、黒鉛環境に由来する炭素混入である。黒鉛ダイス・パンチや雰囲気中の炭素が試料に取り込まれると、灰色〜褐色の着色を生じ、可視域の透過率を下げる。立方晶ゆえに散乱要因が少ないAlONでは、この着色が透明度を律速しやすい。

AydogmusらはLa₂O₃とY₂O₃を共添加し、反応焼結を進めながら炭素汚染を抑える方法を検討した。共添加が反応や緻密化を助けつつ、炭素の取り込みを抑える方向に働くことを報告している [4]。このほか、(i) 焼結後の酸化雰囲気アニールによる炭素除去、(ii) 昇温・加圧プロファイルの最適化、(iii) 高純度原料の使用、といった対策が組み合わされる。立方晶という素性の良さと、反応焼結で作り込んだ単相性を、汚染で帳消しにしないことが課題になる。

窒素一つで、結晶を組み替える

透明AlONの研究は、ありふれた酸化アルミニウムに窒素を導入して結晶系そのものを立方晶へ組み替え、複屈折散乱の壁を取り払う試みだと言える。六方晶のアルミナが粒径を極端に小さくして散乱と闘うのに対し、AlONは結晶対称性の追い風を、出発点で手に入れる。

残るのは、反応をどこまで完結させ、気孔をどこまで消し、炭素をどこまで抑えるか——SPSの急速昇温と加圧は、相形成と緻密化という二つの要求を一工程で束ねる、数少ない手段の一つである。透明AlONの焼結は、結晶化学とプロセス物理が同時に走る領域に位置している。


本記事は公開された査読論文をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。

よくある質問

AlONはどのような結晶で、なぜ透明装甲窓に向くのか。
AlONは酸化アルミニウム(Al₂O₃)に窒素を固溶させて立方晶スピネル型の構造に安定化させた単相固溶体で、組成はおよそAl₂₃O₂₇N₅付近をとる。立方晶ゆえに光学的に等方で、粒界での複屈折散乱が原理的に生じないため、微細粒の多結晶でも高い透光性を得やすい。可視から中赤外まで広い透過域を持ち、硬く耐衝撃性に優れるため、防弾性と透視性を両立する透明装甲窓やセンサ窓の候補とされる。
AlONの焼結が他の透明セラミックスと違う点は何か。
YAGやスピネルが既にその組成の粉末を緻密化するのに対し、AlONは原料のAl₂O₃とAlNから固溶反応でAlON相そのものを作りながら、同時に気孔を消して緻密化する必要がある。相形成と緻密化を一工程でそろえる「反応焼結」が要点で、未反応のAl₂O₃やAlNが残ると散乱源になる。SPSの急速昇温と加圧は、この反応と緻密化の両立に使われる [2][3]。
SPSでAlONを作るときの主な課題は何か。
黒鉛ダイス由来の炭素混入による着色に加え、AlON固有の課題として、反応の完結と単相化、そして粒界の純化がある。焼結助剤としてY₂O₃やMgO、La₂O₃を少量加えると、反応や物質移動を助け緻密化と透光性を改善できる一方、過剰だと第二相を生じる。AydogmusらはLa₂O₃-Y₂O₃の共添加で炭素汚染を抑えつつ反応焼結を進める試みを報告している [4]。

参考文献

  1. [1] Munir ZA, Anselmi-Tamburini U, Ohyanagi M. The effect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials: A review of the spark plasma sintering method. J Mater Sci. 2006;41(3):763-777. DOI: 10.1007/s10853-006-6555-2
  2. [2] Shan Y, Wei X, Sun X, Torresani E, Olevsky EA, Xu J. Effect of heating rate on properties of transparent aluminum oxynitride sintered by spark plasma sintering. J Am Ceram Soc. 2019;102(2):662-673. DOI: 10.1111/jace.16030
  3. [3] Li X, Luo J, Zhou Y. Spark plasma sintering behavior of AlON ceramics doped with different concentrations of Y2O3. J Eur Ceram Soc. 2015;35(7):2027-2032. DOI: 10.1016/j.jeurceramsoc.2015.01.014
  4. [4] Aydogmus D, Duygulu O, Sahin FC. In-situ spark plasma sintering behavior of La2O3–Y2O3 co-doped AlON ceramics: An attempt to prevent carbon contamination. J Mater Res Technol. 2023;27:2323-2335. DOI: 10.1016/j.jmrt.2023.10.047