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ロケットノズル材料の放電プラズマ焼結 — 燃焼ガスに削られないスロートを作る

ロケットノズル、とりわけ最も細いスロート部は、摂氏数千度の燃焼ガスが高速で吹き抜ける場所であり、融解とアブレーションに同時に耐えなければならない。タングステンなどの高融点金属、超高温セラミックス、炭素繊維複合材が候補となる。放電プラズマ焼結(SPS)は、これらの難焼結材を緻密に固め、アブレーション挙動を評価する手段として公開研究で検討されてきた。本稿はノズル材料という視点からその機序を整理する。

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  • SPS
  • ロケットノズル
  • 高融点金属
  • 超高温セラミックス

喉という、いちばん細くて熱い場所

ロケットエンジンは、燃焼室で生み出した高温・高圧のガスをノズルから後方へ噴き出し、その反作用で推力を得る。ノズルはラッパのように広がる形をしているが、その付け根には、流路が最も細くくびれた一点がある。スロート(喉部, throat)だ。

このスロートこそ、ノズルの中で最も過酷な場所である。燃焼室のガスはここで音速を超えて一気に加速し、摂氏数千度のガスが高速で吹き抜ける。しかもスロートの断面積は、エンジンが生む推力や効率を直接決める寸法だ。ガスに削られてスロートが広がれば、設計どおりの性能が出なくなる。

つまりスロート材料には、二重の責務がある。第一に、摂氏数千度のガスに融けないこと。第二に、高速ガスに表面を削られないこと(耐アブレーション)。そして、その両方を満たしながら寸法を保ち続けること。融解と削れという二つの劣化に同時に抗い、形を変えずに役目を全うする——これがスロート材料に課された注文である [1]。

三つの素材系と、その持ち味

この注文に応える材料には、性格の異なる三つの系がある。

一つめは、高融点金属タングステン。融点が摂氏3400度級と、実用金属の中で群を抜いて高い。金属らしい熱伝導と靭性を併せ持ち、熱を逃がしながら高温に耐える。固体ロケットのスロートインサートなど、極端な熱に晒される部位の候補として古くから知られる [2]。

二つめは、超高温セラミックス(UHTC)。ジルコニウムやハフニウムのホウ化物・炭化物は、融点が摂氏3000度級で、高温でも硬さを保つ。炭化ケイ素(SiC)を加えれば、高温の酸化環境で表面に保護的な酸化層を作り、削れの進行を遅らせる。融点の高さと、自らを覆って守るしくみの両方を備える [3]。

三つめは、炭素繊維で補強した複合材。軽く、急な加熱による熱衝撃で割れにくい。繊維が亀裂の進展を妨げ、セラミックス単体では脆い部位に粘り強さを与える。マトリックスにUHTCや炭化物を選べば、耐熱と靭性を両立できる [4]。

どの系を選ぶかは、燃焼ガスの温度や成分、燃焼時間、許される重量によって変わる。共通するのは、いずれも融点が高く、それゆえにふつうには焼き固めにくい難焼結材だという点だ。ここに、焼結手法の選択が効いてくる [2][3]。

アブレーションに抗う組織

スロート材料の実力は、アブレーションへの抵抗で測られる。アブレーションとは、高温・高速のガスにさらされた表面が、酸化・蒸発・機械的な剥離によって削られていく現象である。地上では、酸素アセチレン炎やレーザーをノズル材料の表面に当て、削れた深さや背面温度の上昇を計測してこの抵抗を評価する。

ここで重要なのが組織の質だ。気孔や粗大粒、不均質な相は、ガスに突かれて局所的に削れる起点になる。逆に、緻密で欠陥が少なく、組織が均質なほど、削れは表面全体に均されて進みにくくなる。同じ組成でも、どう焼き固めたかでアブレーション抵抗は変わる。融点の高さは材料が持って生まれた性質だが、削れにくさは組織の作り込みに左右される——だからこそ、難焼結材をいかに緻密に固めるかが問われる [2][3][4]。

SPSがノズル材料に効く理由

放電プラズマ焼結(SPS)は、黒鉛ダイスに充填した粉末へパルス直流を流し、ジュール加熱で急速に昇温しながら一軸加圧する手法である [1]。融点の高いノズル材料にとって、この手法には次の意義がある。

  • 高融点金属を緻密化できる:タングステンは融点が高い裏返しとして、常圧では焼き固めにくい。SPSは加圧と急速通電加熱で、こうした難焼結金属を高密度のバルク体にできる。Leeらは、タングステン粉末のSPSによる緻密化機構と力学特性を調べ、緻密化の進み方を整理している [2]。
  • 超高温セラミックスを緻密化し、アブレーション挙動を評価できる:UHTCも難焼結だが、SPSなら緻密に固められる。Zhangらは、ZrB₂–SiCをSPSで緻密化し、力学特性とアブレーション挙動を評価している。緻密で均質な組織が削れにくさにつながる方向を示している [3]。
  • 繊維強化複合材を低損傷で緻密化できる:炭素繊維とマトリックスを組み合わせた複合材は、SPSの短時間焼結なら繊維の損傷を抑えて緻密化しやすい。Tongらは炭素繊維強化ZrC基複合材のレーザーアブレーション挙動を、Ghasaliらは炭化ケイ素/炭素繊維複合材のSPS作製を、それぞれ報告している [4][5]。
  • 新組成を素早く試作・評価できる:低温・短時間で固められるため、組成や添加の効果を素早く検証できる。スロート材料の候補を絞り込む研究・試作の場面で、SPSは小さな緻密試料を効率よく作る手段になる。

これらはいずれも、ノズル・スロートが求める「融けず・削れず・寸法を保つ材料を、難焼結であっても緻密かつ低損傷で形にする」という要求に、SPSが組織の制御を通じて応えうることを示している [2][4]。

喉を守るとは、組織を守ること

ロケットの推力は、スロートという小さな一点の寸法に支えられている。その一点が摂氏数千度のガスに融けず、高速の流れに削られず、形を保ち続けてはじめて、エンジンは設計どおりの仕事をする。タングステンの高融点、UHTCの耐酸化層、炭素繊維の靭性——どの素材を選ぶにせよ、最後にものを言うのは、それを緻密で均質な組織として固められるかどうかである。

SPSは、融点が高くゆえに焼き固めにくい材料を緻密化し、繊維強化複合材を低損傷で成形し、新組成のアブレーション挙動を素早く評価する道を開く。喉を守るという仕事は、突き詰めれば、削れの起点となる欠陥を組織から排し、均質さを焼結の段階で作り込む作業にほかならない。


本記事は公開された査読論文・総説をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。

よくある質問

ロケットノズルのどこが最も過酷なのか。
ノズルの中でも、ガス流路が最も細くくびれたスロート(喉部)が最過酷である。燃焼室の高温・高圧ガスはここで音速を超えて加速し、摂氏数千度のガスが激しく吹き抜ける。スロートの寸法はエンジン性能を直接左右するため、削れて広がると推力や効率が落ちる。融解と、高速ガスによる表面の削れ(アブレーション)に同時に耐え、寸法を保ち続けることがスロート材料の使命である [1]。
ノズル・スロートにはどんな材料が使われるのか。
代表は、融点が摂氏3400度級と極めて高い高融点金属タングステン、ジルコニウムやハフニウムのホウ化物・炭化物に代表される超高温セラミックス(UHTC)、そして炭素繊維で補強した複合材である。タングステンは融点の高さで、UHTCは高融点と耐酸化層の形成で、炭素繊維複合材は軽さと耐熱衝撃性で、それぞれ過酷なガス環境に立ち向かう。用途や燃焼条件に応じて選び分けられる [2][3][4]。
SPSはノズル材料の研究でどう使われるのか。
SPSはパルス通電による急速加熱と加圧で、融点が高く本来は焼き固めにくいタングステンやUHTCを、低温・短時間で緻密なバルク体にできる。緻密で欠陥の少ない組織はアブレーション抵抗を高める方向に働く。炭素繊維とマトリックスを組み合わせた複合材も、短時間焼結なら繊維の損傷を抑えて緻密化しやすい。新組成のアブレーション挙動を素早く評価できる研究・試作手段として用いられている [2][4][5]。

参考文献

  1. [1] Munir ZA, Anselmi-Tamburini U, Ohyanagi M. The effect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials: A review of the spark plasma sintering method. J Mater Sci. 2006;41(3):763-777. DOI: 10.1007/s10853-006-6555-2
  2. [2] Lee G, McKittrick J, Ivanov E, Olevsky EA. Densification mechanism and mechanical properties of tungsten powder consolidated by spark plasma sintering. Int J Refract Met Hard Mater. 2016;61:22-29. DOI: 10.1016/j.ijrmhm.2016.07.023
  3. [3] Zhang X, Liu R, Xiong X, Chen Z. Mechanical properties and ablation behavior of ZrB2–SiC ceramics fabricated by spark plasma sintering. Int J Refract Met Hard Mater. 2015;48:120-125. DOI: 10.1016/j.ijrmhm.2014.08.006
  4. [4] Tong Y, Hu Y, Liang X, et al. Carbon fiber reinforced ZrC based ultra-high temperature ceramic matrix composite subjected to laser ablation: Ablation resistance, microstructure and damage mechanism. Ceram Int. 2020;46(10):14408-14415. DOI: 10.1016/j.ceramint.2020.02.236
  5. [5] Ghasali E, Alizadeh M, Pakseresht AH, Ebadzadeh T. Preparation of silicon carbide/carbon fiber composites through high-temperature spark plasma sintering. J Asian Ceram Soc. 2017;5(4):472-478. DOI: 10.1016/j.jascer.2017.10.004
  6. [6] Tokita M. Progress of spark plasma sintering (SPS) method, systems, ceramics applications and industrialization. Ceramics. 2021;4(2):160-198. DOI: 10.3390/ceramics4020014