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パワーエレクトロニクス実装とSPS — 接合層と熱の出口を、低温と傾斜で作り込む

パワーモジュールの寿命は、半導体チップそのものより、チップを支える接合層と熱の出口で決まることが多い。放電プラズマ焼結(SPS)は、低温で銅を接合したり、熱膨張差をやわらげる傾斜組成のヒートスプレッダを作ったりと、実装の「つなぎ目」を作り込む手段として公開研究で検討されてきた。本稿は放熱基板の材料論ではなく、接合と熱の出口に絞ってその機序を整理する。

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壊れるのは、チップではなく「つなぎ目」

電気自動車のインバータや産業用の電力変換装置で、信頼性を最後に左右するのは何か。多くの場合、それは半導体チップそのものではなく、チップを支え、その熱を逃がす「つなぎ目」——接合層と熱の出口である。

パワーモジュールは、半導体チップの動作と停止にともない、急激な加熱と冷却を何万回も繰り返す。チップ、絶縁基板、回路の金属、ヒートシンク——これらは互いに熱膨張のしかたが違う。その差が温度変化のたびに接合層へ応力を集中させ、はんだの接合層にき裂を入れていく。き裂が広がれば熱が逃げにくくなり、温度が上がり、劣化がさらに進む。チップが壊れる前に、つなぎ目が先に音を上げるのだ [1]。

放熱基板にどんな材料を使うか——窒化ケイ素か、窒化アルミニウムか——という材料論は、別の場所で論じた。本稿が見るのは、その手前と先にある「接合層」と「熱の出口」だ。放電プラズマ焼結(SPS)は、この二つを作り込む手段として、公開研究で検討されてきた。

SPSが効く理由 — 界面にエネルギーと圧力を集中できる

SPSは、粉末や被接合体を黒鉛のダイス・パンチで挟み、パルス直流を流してジュール加熱しながら一軸加圧する手法だ [3]。実装のつなぎ目を作るうえで都合がよいのは、加熱と加圧を接合界面に直接、集中して投入できる点にある。

外部ヒーターで全体をゆっくり温める方式と違い、SPSは通電で界面近傍を素早く温め、同時に機械的な圧力をかける。短時間で必要なエネルギーを界面に届けられるため、母材を高温に長くさらさずに接合を成立させられる。この「界面集中」という性格が、低温接合と傾斜接合という二つの作り込みを可能にする [1][4]。

低温で銅を接合する

接合層の劣化を避ける一つの方向が、より丈夫な接合材を使うことだ。銅は熱伝導率が高く、はんだより高温に耐える。問題は、銅の融点が高く、通常の溶融接合では母材やチップに過大な熱負荷をかけてしまう点にある。

ここでSPSの界面集中が効く。パルス通電による発熱と一軸加圧を界面にかけると、銅表面の酸化を抑えながら原子の相互拡散が進み、銅の融点よりはるかに低い温度で固相接合が成立する。Mouawadらは、SPS手法を用いてパワーエレクトロニクス向けの低温銅接合を実証し、シリコンのパワーチップとセラミックス基板を含む試験組立てを構成して、三次元実装の要件に適合しうることを示した [1]。融かさずに、押し付けて拡散させる——この発想が、熱負荷を抑えた丈夫な接合層につながる。

熱膨張差を、傾斜でやわらげる

もう一つの方向が、熱の出口の側、すなわちヒートスプレッダやヒートシンクの作り込みだ。

セラミックス基板や半導体側は熱膨張が小さく、銅のヒートシンクは熱膨張が大きい。両者を直接貼り合わせると、境界に大きな膨張差の応力が残り、熱サイクルでそこから壊れていく。これをやわらげる発想が、傾斜機能材料(FGM)である。たとえばタングステンと銅を、厚み方向で組成を連続的に変えて積層する。タングステン側は低膨張・低熱伝導、銅側は高膨張・高熱伝導とし、その間をなだらかにつなぐ。膨張差を一つの界面に集中させず、層をまたいで分散できる。

SPSは、組成の異なる粉末を層状に積み、一度の通電加圧で焼結・接合できる。傾斜組成を一体で作り込むのに向く手法だ。Yusefiらは、三層構造のW-Cu傾斜複合材をSPSで作製し、組成の段階的な変化を一体焼結で実現している。こうした傾斜ヒートスプレッダは、低膨張のチップ側と高熱伝導の放熱側を、応力を逃がしながらつなぐ熱の出口になりうる [2]。

量産プロセスのなかでの位置づけ

実際のパワーモジュールの接合層は、その多くが焼結接合材やはんだリフローといった、面で一括処理できる量産プロセスで作られている。SPSは原理的にダイスで挟んだ範囲の加圧通電であり、大面積・多数個の連続接合そのものには形状的な制約がある。

それでも、SPSは「接合と傾斜組成を、温度・圧力・通電を制御しながら一体で作り込める手段」として価値を持つ。新しい接合材の組み合わせ、傾斜層の構成、低温接合の条件——こうした探索を、接合条件と信頼性の関係を短いサイクルで回しながら検証できる。実装の信頼性をつなぎ目の言葉で設計する、その開発手段としての位置づけである [4]。

つなぎ目の質が、モジュールの寿命を決める

パワーモジュールの信頼性は、チップの性能だけでは決まらない。チップを支える接合層が繰り返しの熱応力に耐えるか、熱の出口が膨張差を逃がせるか——この二つが寿命を左右する。

融かさずに押し付けて接合し、組成を傾斜させて膨張差を分散する。SPSは、界面に加熱と加圧を集中できるという性格を活かして、この二つの作り込みを支える。放熱基板という主役の手前と先で、つなぎ目の質を作る作業——それがパワーエレクトロニクス実装におけるSPSの役どころである。


本記事は公開された査読論文をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。

よくある質問

パワーモジュールの実装で、なぜ接合層が問題になるのか。
パワーモジュールは半導体チップの動作と停止にともない、急激な加熱と冷却を繰り返す。チップ・基板・ヒートシンクはそれぞれ熱膨張のしかたが違い、その差が接合層に応力を集中させる。はんだ接合では、この繰り返し応力で接合層にき裂が進み、やがて熱抵抗の上昇や剥離を招く。チップが壊れる前に「つなぎ目」が先に劣化するため、接合層の作り込みが信頼性の要になる [1]。
SPSで銅を低温接合できるのはなぜか。
SPSはパルス通電による局所的な発熱と一軸加圧を接合界面に直接かけられる。界面に集中して投入されるエネルギーと加圧が、銅の表面酸化を抑えつつ原子の相互拡散を促すため、銅の融点よりはるかに低い温度で固相接合が成立する。Mouawadらは、SPS手法を用いてパワーエレクトロニクス向けの低温銅接合を実証し、シリコンパワーチップとセラミックス基板を含む試験組立てを示している [1]。
傾斜組成のヒートスプレッダは何の役に立つのか。
セラミックス(低膨張)と銅(高膨張・高熱伝導)を直接貼り合わせると、界面に大きな熱膨張差の応力が残る。タングステン-銅のように組成を厚み方向で連続的に変えた傾斜材(FGM)にすると、膨張差を界面の一点に集中させず層をまたいで分散できる。SPSは粉末を層状に積んで一度に焼結・接合できるため、こうした傾斜ヒートスプレッダの作製に向く。Yusefiらは三層構造のW-Cu傾斜材をSPSで作製している [2]。

参考文献

  1. [1] Mouawad B, Soueidan M, Fabregue D, Buttay C, Allard B, Bley V, Morel H, Martin C. Application of the spark plasma sintering technique to low-temperature copper bonding. IEEE Trans Compon Packaging Manuf Technol. 2012;2(4):553-560. DOI: 10.1109/tcpmt.2012.2186453
  2. [2] Yusefi A, Parvin N. Fabrication of three layered W-Cu functionally graded composite via spark plasma sintering. Fusion Eng Des. 2017;114:196-202. DOI: 10.1016/j.fusengdes.2016.11.013
  3. [3] Munir ZA, Anselmi-Tamburini U, Ohyanagi M. The effect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials: A review of the spark plasma sintering method. J Mater Sci. 2006;41(3):763-777. DOI: 10.1007/s10853-006-6555-2
  4. [4] Tokita M. Progress of spark plasma sintering (SPS) method, systems, ceramics applications and industrialization. Ceramics. 2021;4(2):160-198. DOI: 10.3390/ceramics4020014