Sintering Frontier焼結フロンティア
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液相焼結とSPS — 液体を味方につけて固める

焼結中にわずかな液体を生じさせ、その液体を使って緻密化を加速するのが液相焼結である。固体だけの拡散より速く気孔を消せる一方、液相は粒成長も招きやすい。放電プラズマ焼結(SPS)の急速性は、この液相焼結とどう噛み合うのか。粒子再配列・溶解再析出という三段の機構と、SPSで液相を短時間に使い切る考え方を、公開論文をもとに整理する。

  • 放電プラズマ焼結
  • SPS
  • 液相焼結
  • 溶解再析出

固体だけでは、なかなか縮まない

焼結とは、粉末の粒子どうしを高温でくっつけ、気孔を消して緻密な塊にする過程だ。固体だけで進める場合、物質は固体の中を拡散して移動し、粒子と粒子の接点(ネック)を太らせ、気孔を埋めていく。

だが、固体の中の拡散は遅い。原子が固体格子の中をじりじりと動くには、高い温度と長い時間が要る。緻密化はなかなか進まず、待っている間に結晶粒だけが太ってしまうこともある。固相焼結には、こうした「遅さ」が付きまとう。

ここで、わずかな液体の力を借りるのが液相焼結である。焼結温度で一部の成分を溶かし、生じた液体を粒子の隙間に行き渡らせる。液体の中では、物質は固体の中よりずっと速く動く。この速い通り道を使って、緻密化を一気に進めるのが、液相焼結の発想だ [1]。

三段で進む、液相焼結の機構

液相焼結は、おおまかに三つの段階を踏んで進む。Germanらの大部の総説は、二千を超える文献をもとに、この過程を体系的に整理している [1]。

第一段:粒子再配列。焼結温度で液体が生じると、その液体は固体粒子の表面を濡らし、粒子の隙間に入り込む。液体には表面張力があり、粒子どうしを引き寄せる毛管力が働く。この力で、粒子は液体の中を滑り、より密に詰まり直す。まるで、乾いた砂より湿った砂の方が固まりやすいように、液体が潤滑剤となって粒子の再配列を助ける。

第二段:溶解再析出。次に起きるのが、物質の「引っ越し」だ。小さな粒子や、粒子の尖った角は、液体に溶けやすい。溶けた成分は液体の中を運ばれ、大きな粒子の平らな面の上に再び析出する。この溶解と再析出を通じて、小さな粒は消え、大きな粒が育ち、その過程で気孔が埋まっていく。液体が物質を運ぶ高速道路として働く段階である。

第三段:固体骨格の最終緻密化。最後に、育った固体粒子どうしが直接つながり、骨格を作る。残った気孔が消え、緻密化が仕上がる。この段では、固相焼結に近い、固体どうしの接合が主役になる。

液相を、SPSで素早く使い切る

液相焼結は速い。だが、速さには代償がある。液体が長く存在すると、溶解再析出で大きな粒がどんどん育ち、粒成長が進んでしまう。緻密化は得られても、組織が粗くなり、微細さ由来の性質が失われやすい。液相は、緻密化の味方であると同時に、粒成長の引き金でもある [1]。

ここでSPSの急速性が噛み合う。SPSは、電流によるジュール加熱で液相が生じる温度へ素早く到達し、加圧で粒子再配列を後押しする。緻密化が短時間で終われば、液体が存在する時間そのものが短くなる。液相を「素早く使って、素早く引く」ことで、緻密化の恩恵を受けつつ、粒成長を抑えやすくなる [2]。

この考え方を実際の材料で示したのが、炭化ケイ素(SiC)の研究である。SiCは固相だけでは緻密化しにくく、液相を生む添加物を加えて焼くことが多い。HottaとHojoは、SiCに窒化アルミニウム(AlN)を添加し、SPSで液相焼結することで、緻密化を進めつつ粒成長を抑えられることを報告した [3]。添加物の選択とSPSの短時間焼結を組み合わせ、液相の長所と短所を制御した例である。

電流活性化・電流支援焼結の総説でも、液相を介した緻密化はSPSの主要な機構の一つとして位置づけられている [4]。液相は、SPSが扱う物質移動の経路の中で、固相拡散とは別の、速い経路を提供する。

速い経路を、短く使う

液相焼結は、固体だけの遅い拡散に頼らず、液体という速い経路を使って緻密化を進める手法だ。粒子再配列で詰め、溶解再析出で物質を運び、固体骨格で仕上げる——この三段の機構が、固相焼結より速い緻密化を支える。

だが液相は、緻密化と粒成長の両方を加速する両刃の剣でもある。だからこそ、液相が存在する時間を短く抑えることが鍵になる。SPSの急速昇温と加圧は、まさにこの「速い経路を、短く使う」という制御に向く。液体を味方につけながら、その暴走を時間で抑え込む——液相焼結とSPSの組み合わせは、緻密化と組織制御の両立を狙う一つの定石なのである。


本記事は公開された査読論文・総説をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。

よくある質問

液相焼結とは何か。
焼結温度で一部の成分が溶けて液体になり、その液体が粒子の隙間に行き渡って緻密化を助ける焼結である。固体どうしの拡散だけに頼る固相焼結より速く気孔を消せる。液体は、粒子を動かす潤滑、物質を運ぶ通り道、そして粒子をくっつける橋として働く [1]。
液相焼結はどんな段階を経て進むのか。
おおまかに三段で進む。第一段は粒子再配列で、生じた液体が粒子を濡らし、毛管力で粒子どうしが滑って詰まる。第二段は溶解再析出で、小さな粒や尖った部分が液体に溶け、大きな粒の上に再び析出して気孔が消える。第三段は固体骨格の最終緻密化である [1]。
SPSと液相焼結はどう噛み合うのか。
SPSは急速昇温と加圧を特徴とする。液相が生じる温度へ素早く到達し、加圧が粒子再配列を後押しするため、短時間で緻密化できる。短時間で済めば、液相が長く存在することで進む粒成長を抑えやすい。SPSは液相を「素早く使って素早く引く」方向に働きうる [2][3]。

参考文献

  1. [1] German RM, Suri P, Park SJ. Review: liquid phase sintering. J Mater Sci. 2009;44(1):1-39. DOI: 10.1007/s10853-008-3008-0
  2. [2] Munir ZA, Anselmi-Tamburini U, Ohyanagi M. The effect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials: A review of the spark plasma sintering method. J Mater Sci. 2006;41(3):763-777. DOI: 10.1007/s10853-006-6555-2
  3. [3] Hotta M, Hojo J. Inhibition of grain growth in liquid-phase sintered SiC ceramics by AlN additive and spark plasma sintering. J Eur Ceram Soc. 2010;30(10):2117-2122. DOI: 10.1016/j.jeurceramsoc.2010.04.006
  4. [4] Orrù R, Licheri R, Locci AM, Cincotti A, Cao G. Consolidation/synthesis of materials by electric current activated/assisted sintering. Mater Sci Eng R Rep. 2009;63(4-6):127-287. DOI: 10.1016/j.mser.2008.09.003