Sintering Frontier焼結フロンティア
equipment公開

焼結体の密度測定 — 相対密度という指標をどう正しく測るか

焼結の良し悪しは、まず密度で語られる。SPSの論文に並ぶ「相対密度99%」という数字は、どう測られた値なのか。アルキメデス法・幾何法・画像解析・気体置換法といった手法には、それぞれ前提と落とし穴がある。密度測定の原理と、相対密度という指標を正しく読むための注意点を、公開論文をもとに整理する。

  • 放電プラズマ焼結
  • SPS
  • 密度測定
  • 相対密度

「相対密度99%」という数字の意味

放電プラズマ焼結(SPS)の論文には、ほぼ必ず密度が記される。「相対密度99%」「ほぼ完全緻密」——緻密化がうまくいったことを示す、最初の成績表だ。

だが、この数字がどう測られたかを気に留める人は意外に少ない。相対密度は、測定法・前提・試料の状態によって、同じ焼結体でも違って出うる量である。数字を額面どおりに受け取る前に、それがどの手法で、何を体積に数えて得られた値かを知る必要がある。本稿は、密度測定の原理と、相対密度を正しく読むための注意点を整理する。

相対密度とは何を表すか

まず指標そのものを押さえたい。相対密度とは、実際に測った焼結体のかさ密度を、その材料が空孔をまったく含まないときの理論密度で割った値である。

理論密度は、結晶構造と組成から計算される、その材料が取りうる最大の密度だ。相対密度が99%なら、体積の1%がまだ空孔として残っていることを意味する。100%に近いほど、空孔が消え、緻密化が進んだことになる [1]。

この指標が重視されるのは、材料の性質の多くが密度に強く依存するからだ。強度・硬さ・熱伝導・透光性——いずれも残った空孔に左右される。緻密化機構を論じる研究でも、相対密度の時間変化(緻密化曲線)が解析の出発点になる。Bernard-GrangerとGuizardやAntouらは、まさにこの密度の変化を追うことで、緻密化を支配する物質移動機構を推定している [2][3]。密度は、SPS研究の共通言語なのである。

主な測定法と、その前提

密度を測る方法はいくつもあり、それぞれ「どこまでを体積に数えるか」が異なる。

  • 幾何法:試料の寸法を測って外形体積を求め、質量を割る。最も単純だが、規則的な形(円盤や直方体)にしか使えず、外形の測定誤差がそのまま効く。外形体積には開気孔も閉気孔も含まれる。
  • アルキメデス法:試料を空気中と液体中で秤量し、浮力から体積を求める。簡便で再現性が高く、不規則な形にも使える。ただし表面につながった開気孔があると、液体が入り込んで体積を過小評価し、密度を実際より高く出すおそれがある [5]。
  • 画像解析(断面観察):研磨した断面を顕微鏡で観察し、空孔の面積率から気孔率を求める。空孔の分布や大きさまで見えるが、二次元の断面が試料全体を代表するとは限らない。
  • 気体置換法(ピクノメトリ):ヘリウムなどの気体が入り込める空間を排除して体積を求め、閉気孔以外を含まない真密度に近い値を得る。開気孔まで除くため、かさ密度とは別の量を測っている。

Westphalらは、金属・セラミックス・樹脂・複合材にわたってこれらの手法を比較し、気体置換法が真密度の決定に適し、アルキメデス法は技術的性質と結びつくみかけ密度の決定に適する、と整理している [6]。手法ごとに「測っている密度」が違うのである。

なぜ手法で値がずれるのか

同じ焼結体でも、測定法によって密度が違って出る。その原因は、各手法が空孔のどれを体積に数えるかにある。

幾何法とアルキメデス法は、原理上、外形に含まれる空間を体積として扱う。ただしアルキメデス法は、開気孔に液体が入ると、その分の体積を見落とす。Bruceらは、レーザー粉末床溶融で作った薄肉試料を対象に、アルキメデス法の測定能力とプロセス感度を批判的に検討し、表面状態や開気孔の有無が結果に影響しうることを示した [5]。彼らは、アルキメデス法が簡便で再現性が高い一方、試料の状態によっては系統的な偏りを生じうると指摘している。

気体置換法は逆に、閉気孔以外をすべて排除するため、開気孔の多い試料では、かさ密度より高い値を返す。つまり「真密度」と「かさ密度」は別物であり、どちらを相対密度の分子に使うかで、同じ試料の相対密度が変わってしまう。

この食い違いは誤りではなく、各手法が異なる量を正しく測っている結果である。問題になるのは、どの密度を測ったかを明示せずに数字だけを比較するときだ [6]。

数字の裏にある測定法を読む

「相対密度99%」は、それ自体が一つの測定法と前提を背負った量である。どの手法で、開気孔をどう扱い、どの理論密度で割った値か——これらが揃ってはじめて、数字は比較可能になる。

緻密化の研究や品質管理で密度を扱うなら、測定法を明記し、開気孔の有無を意識し、目的に合った手法を選ぶことが欠かせない。緻密な焼結体ほど開気孔は少なくアルキメデス法と気体置換法の差は縮まるが、緻密化の途中段階や多孔質体では、手法の選択が結果を大きく左右する [5][6]。密度測定は単純な作業に見えて、SPSの成果を定量的に語るための、最初の関門なのである。


本記事は公開された査読論文をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。

よくある質問

相対密度とは何か。
実際に測った焼結体の密度(かさ密度)を、その材料が空孔ゼロのときに持つ理論密度で割った値である。99%なら、体積の1%がまだ空孔として残っていることを意味する。緻密化がどこまで進んだかを示す基本指標で、機械的・熱的・光学的な性質の多くがこの値に強く依存する [1]。
アルキメデス法はどういう原理か。
試料を空気中と液体中で秤量し、その重さの差(浮力)から体積を求めて密度を算出する。簡便で再現性が高く、不規則な形の試料にも使えるのが利点である。ただし表面につながった開気孔があると、液体が入り込んで体積を過小評価し、密度を実際より高く見積もるおそれがある [5][6]。
なぜ測定法によって密度が違って出るのか。
各手法が「どの空孔まで体積に数えるか」が異なるためである。幾何法は外形だけから体積を出すので開気孔も閉気孔も含むが形状制約が大きい。アルキメデス法は開気孔の扱いで結果が変わる。気体置換法は閉気孔以外を排除して真密度に近い値を出す。目的に応じて手法を選び、どの密度を測ったかを明示することが重要である [5][6]。

参考文献

  1. [1] Munir ZA, Anselmi-Tamburini U, Ohyanagi M. The effect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials: A review of the spark plasma sintering method. J Mater Sci. 2006;41(3):763-777. DOI: 10.1007/s10853-006-6555-2
  2. [2] Bernard-Granger G, Guizard C. Spark plasma sintering of a commercially available granulated zirconia powder: I. Sintering path and hypotheses about the mechanism(s) controlling densification. Acta Mater. 2007;55(10):3493-3504. DOI: 10.1016/j.actamat.2007.01.048
  3. [3] Antou G, Guyot P, Pradeilles N, Vandenhende M, Maître A. Identification of densification mechanisms of pressure-assisted sintering: application to hot pressing and spark plasma sintering of alumina. J Mater Sci. 2015;50(5):2327-2336. DOI: 10.1007/s10853-014-8804-0
  4. [4] Guillon O, Gonzalez-Julian J, Dargatz B, Kessel T, Schierning G, Räthel J, Herrmann M. Field-assisted sintering technology/spark plasma sintering: Mechanisms, materials, and technology developments. Adv Eng Mater. 2014;16(7):830-849. DOI: 10.1002/adem.201300409
  5. [5] Bruce D, Paradise P, Saxena A, Temes S, Clark R, Noe C, Benedict M, Broderick T, Bhate D. A critical assessment of the Archimedes density method for thin-wall specimens in laser powder bed fusion: Measurement capability, process sensitivity and property correlation. J Manuf Process. 2022;79:185-192. DOI: 10.1016/j.jmapro.2022.04.059
  6. [6] Westphal E, Seitz H. Porosity and density measurement of additively manufactured components: A comparative analysis of measurement methods across processes and materials. Mater Sci Addit Manuf. 2025;4(2):025090010. DOI: 10.36922/msam025090010