Sintering Frontier焼結フロンティア
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セラミック基複合材料(CMC)の放電プラズマ焼結 — 繊維を傷めずに緻密化する

セラミック基複合材料(CMC)は、脆いセラミックスに繊維やウィスカーを組み込み、亀裂が一気に走るのを防いで靱性を高めた材料である。問題は、緻密化に必要な高温が繊維を傷めること。放電プラズマ焼結(SPS)は短時間焼結でこの矛盾を緩める。本稿は、SiC系CMCの繊維保護と緻密化の両立を、LiやParkらの公開研究をもとに機序から整理する。

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脆さを、繊維で飼いならす

セラミックスは硬く、高温に強く、軽い。しかし致命的な弱点がある——脆いことだ。小さな亀裂が一つ入ると、それが一気に走って破壊に至る。金属のように変形してエネルギーを逃がす余地が乏しいため、突然壊れる。

この脆さを飼いならすために考えられたのが、セラミック基複合材料(CMC)である。炭化ケイ素(SiC)などのセラミックス母相に、繊維やウィスカー(針状結晶)といった強化相を組み込む。亀裂が母相を進もうとすると、繊維がそれを橋渡しして妨げたり、繊維が母相から引き抜かれたりする。こうした過程で破壊までに多くのエネルギーが吸収され、靱性が大きく高まる。単体では突然壊れるセラミックスが、繊維を得て「壊れにくい」材料に変わるのである [3]。

だが、この繊維を組み込んだ材料を緻密に焼き固めるのは、見かけ以上に難しい。

高温と繊維保護の板挟み

CMC 作製の中心課題は、緻密化と繊維保護の相反である。

セラミックス母相を気孔なく緻密に焼き固めるには、高温が要る。SiC のような難焼結材料では、特に高い温度が必要になる。ところが、その高温が強化繊維を傷める。繊維が熱で結晶構造を変えて劣化したり、強度を失ったりする。さらに、母相と繊維が高温で過剰に反応すると、両者の界面が強く結びつきすぎてしまう。

界面が強すぎるのは、実は問題だ。繊維による靱性向上は、亀裂が来たときに繊維がほどよく剥がれて引き抜かれることに依存する。界面が固着しすぎると、繊維は引き抜かれずに母相もろとも一緒に割れ、靱性向上の仕組みが働かなくなる。緻密化のための高温と、繊維を健全に保つための低温・短時間——この板挟みをどう解くかが、CMC 焼結の核心である [1][2]。

SPS が時間を味方につける

放電プラズマ焼結(SPS)は、この板挟みを緩める手段として位置付けられている。黒鉛ダイへのパルス通電によるジュール加熱と一軸加圧を組み合わせ、毎分100°Cを超える昇温を実現する。鍵は「時間」だ。高温には到達するが、その保持を数分に抑えられるため、繊維が高温にさらされる時間を最小化できる。

熱による繊維の劣化も、母相との過剰反応も、高温に置かれる時間に強く依存する。SPS の短時間焼結は、緻密化に必要な高温を確保しつつ、繊維がそこに留まる時間を切り詰める。さらに、外部からの一軸加圧が緻密化の駆動力を補うため、より低い温度で高密度化でき、これも繊維保護の方向に働く [1][2]。

SiC系CMCでの実際

SiC を母相とする CMC は、高温構造材料の有力候補である。Li らは、プレセラミック紙(preceramic paper)を出発材料とする SiCf/SiCp 複合材を SPS で作製した。SiC 繊維と SiC 粒子を組み合わせた構造を短時間焼結で緻密化し、繊維を組み込んだ複合材の組織と機械特性を評価している。粉末や繊維をどう配置し、どう緻密化するかという設計が、複合材の性能を決めることを示す研究である [1]。

Park らは、炭素繊維で強化した SiC 複合材(Cf/SiC)を取り上げ、2000°Cに及ぶ超高温域での優れた熱機械特性を報告した。極限的な高温環境でも繊維強化の効果が機能するためには、繊維と母相の界面が健全に保たれていることが前提となる。緻密化の過程で繊維をいかに傷めずに残すかが、最終的な高温性能に直結する [2]。

これらの研究は、母相の種類、繊維の種類、界面の状態という三つの要素を、緻密化プロセスのなかでどう両立させるかという共通の問いに取り組んでいる。

ナノスケールの繊維へ

繊維強化の発想は、太い繊維だけにとどまらない。Cho、Boccaccini、Shaffer らは、カーボンナノチューブをセラミックス母相に組み込む複合材を総説で整理した。直径がナノメートルスケールのカーボンナノチューブを強化相として使う試みは、繊維強化 CMC の延長線上にある。

ただし、ナノスケールの強化相には固有の難しさがある。均一に分散させること、母相との界面を適切に制御すること、そして焼結中に強化相を健全に保つこと——いずれも、太い繊維とは違った配慮を要する。ここでも、低温・短時間で緻密化できる SPS が、強化相を傷めずに複合材を作る手段として検討されてきた。繊維のスケールが変わっても、「緻密化と強化相の保護を両立させる」という課題の構造は変わらない [3]。

時間を制して、靱性を得る

セラミック基複合材料は、脆いセラミックスに繊維を組み込むことで、突然の破壊を防ぐ靱性を獲得する材料である。その作製は、緻密化に必要な高温と、繊維を健全に保つための短時間という、相反する要求の調停にかかっている。

SPS は、高温保持の時間を切り詰めることでこの調停を担う。Li らの SiCf/SiCp 複合材、Park らの超高温 Cf/SiC、Cho らが整理したナノスケール強化相——いずれにおいても、緻密化と強化相保護を両立させる場として SPS が位置付けられてきた [1][2][3]。時間を制することが、繊維を生かし、靱性を得る鍵になる。セラミックスの脆さを飼いならす技術として、SPS は CMC 研究の一翼を担い続けている。


本記事は公開された査読論文をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。

よくある質問

セラミック基複合材料(CMC)とは何か。
炭化ケイ素(SiC)などのセラミックスを母相とし、その中に繊維やウィスカー(針状結晶)などの強化相を組み込んだ複合材料を指す。単体のセラミックスは硬いが脆く、亀裂が入ると一気に破壊しやすい。繊維を組み込むと、亀裂が繊維で橋渡しされたり繊維が引き抜かれたりして、破壊までに多くのエネルギーを吸収する。これにより靱性が大きく高まる [3]。
なぜCMCの緻密化は難しいのか。
セラミックス母相を緻密に焼き固めるには高温が要る。ところが、その高温が強化繊維を傷める。繊維が熱で劣化したり、母相と過剰に反応して結合界面が損なわれたりすると、繊維による靱性向上の効果が失われる。緻密化のための高温と、繊維保護のための低温・短時間が相反する点が、CMC作製の中心課題である [1][2]。
SPSはこの矛盾をどう緩めるのか。
SPS はパルス通電による急速昇温と一軸加圧を組み合わせ、高温保持を数分に抑えて緻密化できる。高温に到達はするが、その時間が短いため、繊維の熱劣化や母相との過剰反応を抑えやすい。外部加圧が緻密化を補うことで、より低い温度で高密度化できる点も、繊維を傷めにくくする方向に働く [1][2]。

参考文献

  1. [1] Li K, Kashkarov E, Syrtanov M, Sedanova E, Ivashutenko A, Lider A, Fan P, Yuan D, Travitzky N. Preceramic paper-derived SiCf/SiCp composites obtained by spark plasma sintering: Processing, microstructure and mechanical properties. Materials. 2020;13(3):607. DOI: 10.3390/ma13030607
  2. [2] Park MS, Gu J, Lee H, Lee SH, Feng L, Fahrenholtz WG. Cf/SiC ceramic matrix composites with extraordinary thermomechanical properties up to 2000 °C. Nanomaterials. 2023;14(1):72. DOI: 10.3390/nano14010072
  3. [3] Cho J, Boccaccini AR, Shaffer MSP. Ceramic matrix composites containing carbon nanotubes. J Mater Sci. 2009;44(8):1934-1951. DOI: 10.1007/s10853-009-3262-9