全固体電池の電極材料の放電プラズマ焼結 — 活物質と電解質を一体に焼き、界面をつなぐ
全固体電池の電極は、電気をためる活物質と、イオンを運ぶ固体電解質が固体どうしで接した複合体だ。この接点(界面)に隙間や反応層があると、イオンも電子も流れず容量が出ない。放電プラズマ焼結(SPS)は活物質と電解質を一体に焼き、界面を密着させながら有害な反応を抑える手段として公開研究で検討されてきた。本稿はその機序を整理する。
- 放電プラズマ焼結
- SPS
- 全固体電池
- 複合電極
電極は、固体どうしの寄せ集め
全固体電池というと、固体電解質ばかりが注目されがちだ。だが電池が容量を出せるかどうかは、電気をためる場所——電極——の出来栄えに大きくかかっている。そして全固体電池の電極は、ひと筋縄ではいかない複合体である。
液体電解液を使う従来の電池では、電極の活物質の隙間に電解液が染み込み、イオンの通り道を自然に作ってくれた。ところが全固体電池では、その役を固体の電解質が担う。活物質の粒のまわりに、イオンを運ぶ固体電解質と、電子を運ぶ導電助剤を行き渡らせ、固体どうしの接点でそれぞれの道をつなぐ。電極は、活物質・固体電解質・導電材を混ぜて固めた複合体——いわば固体どうしの寄せ集めになる [2]。
この寄せ集めがうまく機能するかどうかは、それぞれの粒がどれだけ良く接しているか、すなわち界面の質で決まる。
界面が抱える、二つの難所
固体どうしの接点には、性質の異なる二つの難所がある。
物理的な密着 — 隙間があれば流れは途切れる
ひとつは、ただ接しているだけでは足りないという問題だ。活物質と固体電解質のあいだに気孔や隙間があれば、そこでイオンの流れも電子の流れも途切れる。液体なら隙間を埋めてくれるが、固体は押し付けて密着させない限り、点でしか接しない。電極全体で見れば、密着不足はそのまま容量の出ない原因になる [1]。
化学的な反応 — 焼きすぎると伝導を殺す
もうひとつは、密着させようと高温で焼くと、別の問題が顔を出すことだ。活物質と固体電解質は、高温で長く接すると互いに反応し、界面に伝導の悪い反応層を作ってしまうことがある。せっかく密着させても、その境目に絶縁的な層ができれば、イオンも電子も通れない。
つまり電極づくりは、密着させたいが焼きすぎてはいけないという、相反する要求のあいだで成り立っている [1][2]。
SPSが両立を助ける
放電プラズマ焼結(SPS)は、黒鉛ダイスに詰めた粉末へパルス直流を流し、ジュール加熱で急速昇温しながら一軸加圧する手法である [3][4]。この「急速・加圧・短時間」という性格が、電極の二つの難所に同時に効く。
- 加圧が界面を密着させる:数十MPa級の圧力が活物質と電解質の粒を押し付け、気孔をつぶす。固体どうしの接触面積を広げ、イオンと電子の流れる道をつなぐ [1]。
- 短時間焼結が反応層を抑える:急速に昇温して短時間で緻密化を済ませるため、界面で有害な反応層が育つ暇を与えにくい。低めの温度で固められれば、なおさら反応を抑えやすい [1][3]。
- 一体に焼き上げられる:活物質・電解質・導電材を一度に固めるため、別々に作って貼り合わせるより界面の連続性を確保しやすい [2]。
Tong らは、SPSで作った全固体電池について、固体電解質と電極のあいだの界面の状態を調べ、緻密化の度合いや反応層の有無が界面抵抗にどう効くかを整理している [1]。Woo らは、活物質と固体電解質を組み合わせた複合正極をSPSで作製し、バルク型のハイブリッド固体電池として評価した [2]。
容量は、界面の連続性で決まる
電極の良し悪しは、最終的には充放電で取り出せる容量と、それを高い電流で出せるかどうか(レート特性)に表れる。だがその根は、活物質の一粒一粒へイオンと電子が滞りなく届くかどうか——界面の連続性にある。
どれだけ容量の大きい活物質を選んでも、そのまわりの界面が途切れていれば、内部の活物質は充放電に参加できず、設計どおりの容量は出ない。逆に、界面さえつながっていれば、活物質の能力を引き出しやすい。電極づくりが「界面の作り込み」と言われるゆえんである。SPSの加圧焼結は、この連続性を物理的に確保する手段として位置づけられる [1][2]。ただし最適な温度・圧力・時間は活物質と電解質の組み合わせごとに異なり、一般化はできない。
寄せ集めを、ひとつの回路に
全固体電池の電極は、活物質・固体電解質・導電材という性質の違う固体を寄せ集め、そのすべてをイオンと電子が滞りなく流れるひとつの回路に仕立てる仕事である。隙間があれば流れは途切れ、焼きすぎれば界面が伝導を失う——この狭い条件の窓を、加圧と短時間焼結で狙うのがSPSの役割だ。
固体電解質が安全とエネルギー密度の鍵を握るなら、電極はその性能を実際の容量へ変える出口である。電極材料の焼結は、全固体電池を「動く電池」にするための、界面に向き合う作り込みの工程である。
本記事は公開された査読論文をもとに整理した解説です。引用先の論文本文は各 DOI から参照できます。事実誤認のご指摘は editor@sps.ss-hd.co.jp までお願いします(暫定アドレス)。
よくある質問
- 全固体電池の電極が複合体なのはなぜか。
- 電極は活物質だけでは働かない。充放電のとき、活物質の内部へリチウムイオンを出し入れする必要があり、そのイオンを運ぶ道として固体電解質を、電子を運ぶ道として導電助剤を、活物質の粒のまわりに行き渡らせる。液体電解液なら隙間に染み込んでイオンの道を作るが、全固体電池では固体の電解質を活物質と混ぜ、固体どうしの接点で道をつなぐしかない。だから電極は、活物質・固体電解質・導電材を一体にした複合体になる [2]。
- 電極の界面で何が問題になるのか。
- 固体どうしの接点(界面)には二つの難所がある。ひとつは物理的な密着で、活物質と電解質のあいだに気孔や隙間があると、そこでイオンや電子の流れが途切れる。もうひとつは化学的な反応で、活物質と電解質を高温で一緒に焼くと、界面に伝導の悪い反応層ができてしまうことがある。密着させたいが焼きすぎると反応する——この両立が電極づくりの核心になる [1][2]。
- SPSで電極を作るとどのような利点があるか。
- SPSは急速昇温と加圧で短時間に緻密化できるため、活物質と電解質を低めの温度・短時間で一体に焼き固められる。加圧が界面を物理的に密着させて気孔を減らし、短時間焼結が界面での有害な反応層の成長を抑える方向に働く。公開研究では、複合正極をSPSで作製し界面抵抗を下げた報告がある。値は材料の組み合わせと条件に依存する [1][3]。
参考文献
- [1] Tong H, Liu J, Qiao Y, Song X. Characteristics of interface between solid electrolyte and electrode in all-solid-state batteries prepared by spark plasma sintering. J Power Sources. 2022;521:230964. DOI: 10.1016/j.jpowsour.2021.230964
- [2] Woo SP, Lee W, Yoon YS. Composite Cathode Material Using Spark Plasma Sintering for Bulk-Type Hybrid Solid-State Batteries. J Korean Phys Soc. 2018;73(8):1019-1025. DOI: 10.3938/jkps.73.1019
- [3] Munir ZA, Anselmi-Tamburini U, Ohyanagi M. The effect of electric field and pressure on the synthesis and consolidation of materials: A review of the spark plasma sintering method. J Mater Sci. 2006;41(3):763-777. DOI: 10.1007/s10853-006-6555-2
- [4] Guillon O, Gonzalez-Julian J, Dargatz B, Kessel T, Schierning G, Räthel J, Herrmann M. Field-Assisted Sintering Technology/Spark Plasma Sintering: Mechanisms, Materials, and Technology Developments. Adv Eng Mater. 2014;16(7):830-849. DOI: 10.1002/adem.201300409